第二幕

 


 酒場の軒先ではもう街の人たちがみんな飲んでいる。国挙げての大祭り。街はにぎやかな雰囲気。街の人々の表情も明るい。そんな酒場の前に、山から出てきたというふうな男が現れる。

山男:
 しおん様の結婚式が今日行われると聞いて山から出てきたけど、しおん様の結婚行列はいったいどこを通るのだろう? ちょっと街の人に聞いてみよう。ちょっと聞いていいかい?
街の男:
 なんだこっちはいそがしいんだい。
山男:
 すまんすまん。しおん様の結婚行列はどこを通るんかな。
街の男:
 そんならお前の目の前だ。見てみろ、兵士の連中が道を作っているだろ。ここを通る予定らしい。
山男:
 なるほどなるほど。で、相手の男は誰なんだい?
街の男:
 お前本当にこの国の民か?
山男:
 俺はれっきとしたこの国の民さ。昨日山を出て一晩かけてやっと今日、この街までたどり着いた。蛮族が国の辺境に現れては小競り合いが続いているなんていう縁起でもない話は伝わってきても、こういう縁起のいい話はなかなか伝わってこなくてね。田舎者で失礼。で、誰なんかな。
街の男:
 しょうがねえ。お前のために教えてやる。しおん様のお相手は、ランカスター公の御曹司、ハリファクス様だ。ハリファクス様がいれば、蛮族なんぞ恐れるに足らん。この前も、ハリファクス様が率いるランカスター公の軍団が蛮族を蹴散らしたという話さ。しおん様と結婚されることで、なお一層、この国は強くなるだろう。今日、結婚行列を見れば、ハリファクス様のお顔も拝むことができるだろうから、よく見ておけや。
山男:
 ありがとう。山で待っているみんなにも、話を伝えてあげないといかんからな。必ずお二人の姿を見て、とくとこの目に焼き付けて、そして山に帰るつもりだ。
街の男:
 行列が通るまではだいぶ時間があるだろうから、俺の店で飲んで行けよ。程よく酔った頃に行列も通るだろう。もうみんな飲んでるぜ。今日はみんな休みで働いてるのは俺くらいかな。
山男:
 ははは。それはご苦労さま。じゃ、一杯もらおうか。

 山男、空いている席に座り、酒を飲み始める。そして、隣に座る騎士に話しかける。騎士はボロを深くかぶり、顔は見えない。

山男:
 おう、兄ちゃん、飲んでるかい。兄ちゃんも、しおん様の結婚行列、見にきたんかい?
騎士:
 ああ、俺も行列を見たくてね。今朝山を下りてきたところだ。
山男:
 おお、俺も山を出てきたところだ。同じだな。どこの山の騎士だい?
騎士:
 ちょっとそこらの。名前もない山さ。
山男:
 ははは。高い低いはあっても山は山。この国の山であることは間違いない。すべての山はこの国の物、我らが王様の物だ。その王様のお姫様、しおん様がご結婚されるというんだから、こんなめでたいことはない。今日は飲もう、飲もうや。

 山男や周囲の男や女たちが陽気に騒ぐ中で、騎士はボロから顔を出すことなく、ちびりちびりと酒を飲み続ける。そのとき、どこからか声が聞こえる。

声:
 きたぞー。行列がきたぞー。

 酒場を含む街の人は総立ちになり、全員、舞台の右側を見る。舞台の右側より、武装した二騎の騎兵が現れ、騎兵を先頭に行列が現れる。オープンの馬車が現れ、馬車の上に、しおんとハリファクスが乗っている。

街の女:
 あれがハリファクス様ね! かっこいいわ! しおん様もステキ。
山男:
 おお、兄ちゃん、そんなボロかぶっていたら見えんだろう。見ろよ。おお、すごいぞ。

 騎士、かぶっていたボロを取り、顔が見える。エドワードである。

山男:
 あれがハリファクス様か。すごいな。しおん様もすごい。いや、これでこの国もさらに強くなるな。
エドワード:
 そうだな。さらに、この国も、強くなるな。
山男:
 ああ、俺、しおん様と目あっちゃった。俺に笑いかけてくれたぞ。
エドワード:
 それはよかったな。
山男:
 何をしけたツラしやがって。飲もう、兄ちゃん、もっと祝おうぜ。俺の酒やるから飲もう。
エドワード:
 そりゃごっそさん。じゃあ少しもらうか。

 しおんとハリファクスを乗せた馬車がゆっくりと酒場の前を通り過ぎ、舞台の左側に退場していく。山男や街の男や女が陽気に騒いでいる中、ゆっくりと幕は下りる。


 

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